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第3章 アメとムチ

男は黒いカバーのスマホは仕事用、赤いカバーのものはプライベート用と判断した。そしてカバーの種類と、待受画面を見つめ、山口優子という女性の性格を半分くらいは理解できた。そしてスマホの電源が切られたと確認した後、佐々木は胸ポケットからカードを出し、それをエレベーター内のパネルにかざした。

ピィピィと電子音が２回鳴り、ようやく扉が開いた。男は優子を肩に担いだまま、頭を下げ扉を抜けた。そこは地下と同様のエレベーターホールだった。背後でエレベーターの扉が閉まると、女の口から「ンッ…」と声が漏れていた。目の前にはダークブラウンの扉があり、扉横にはパネルが設置されていた。

男はそこにカードをスキャンさせ、ピィと電子音が１度だけ鳴ると、扉のロックが外れ、男はドアノブに手を掛けた。

優子の呼吸が「ふぅっ…ふぅっ…」と荒くなっていくのを、男も耳を立て聞いていた。