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特別捜査官・優子
第3章 アメとムチ
優子は男に肩で担がれ、身動きが全く取れず、口には粘着テープが巻かれていた。それに目隠しまでされ、音だけが頼りだった。エレベーターの上昇を体で感じたが、ここが何階なのか見当もつかない。エレベーターを降り、マンションの部屋に連れ込まれたようだった。

扉の鍵が3度、ガチャと施錠された。出入口の施錠音を聞いて、セキュリティーの高さに拳をつい握ってしまう。この〔扉の向こう側に出られることは、今後ないかもしれない…〕という気持ちに、胸が苦しくなっていく。

男の足がフローリングを踏みしめる。その音が多くすればするほど、優子は要塞のような建物内の奥へと自身が運び込まれ、照明がない、冷え込んだ暗闇に閉じ込められる予感に、情けなさに、胸が締め付けられる想いだった。

優子は空間の温かさを肌で感じ取り、肩を撫で下ろす。数歩歩いた後、扉が開けられる音がした。今度は電子音のしない、自然な音だった。この新たな空間が地獄のような部屋でないことを祈った。フローリングを歩く音がしなかった。代わりに男の体が僅かではあるが、左右に揺れ、上下の浮き沈みも感じ取っていた。
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