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第10章 第二夜　開宴

第10章第3話――競り落とされる運命

「さて――」

玄蛇の静かな声が、ざわつく空気を切り裂いた。

「今夜の”記念すべき相手”は、ここにいるお前たちの中から選ぶことにしよう。」

玲奈の呼吸が止まった。

――そんな、冗談でしょう……？

「っ……！」

無意識に身を引こうとするが、手錠と枷が玲奈の動きを阻む。
逃げることなど、最初から許されていない。

それが分かっていても、玲奈は抗わずにはいられなかった。

「……そんなの……嫌です……。」

かすれた声が零れる。

しかし、その叫びを、玄蛇はただ静かに見下ろしていた。

「これは、お前がどうこうできる話ではない。」

玲奈の喉が詰まる。

その瞬間――

「おお……！」

「ついにか……！」

観客たちの熱が一気に高まった。
低いざわめきが広がり、興奮に満ちた空気がステージを包む。

――今夜、彼らの目的はただひとつ。

玲奈の運命を”競り落とす”こと。

「オークションを始めよう。」

「500万からだ。」

玄蛇の一言で、場内の空気が完全に変わる。

「600万。」

「700。」

「1000万だ。」

玲奈は目を見開いた。

――そんな、大金を……？

「1500。」

「2000万。」

次々と上がっていく金額。

呼吸が浅くなる。
視界がぐらつく。

これが――自分の価値？

「2500万。」

「3000。」

「5000万！！」

――何が起こっているの？

玲奈の意識が、異様な熱に包まれる。

「6000万。」

「7000万。」

額が跳ね上がるたびに、観客たちの熱狂は増していく。

まるで、玲奈の運命そのものが、彼らの欲望の炎で焼かれているようだった。

「8000。」

「9000……！」

そして――

「――1億だ。」

場内が一瞬、静まり返る。

玲奈の頭が真っ白になった。

次の瞬間、歓声が炸裂する。

「1億だと……！？」

「とんでもない額が……！」

「さすがだな……！」

熱狂する観客たち。

そして、玲奈は理解する。

――もう、何もかもが決まってしまった。

玄蛇は仮面の奥で静かに微笑む。

「決まりだ。」

玲奈の運命が、この瞬間、確定された。