パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第11章 第1話――沈む刻

第11章第4話――逃れられぬ時間

玲奈は、ただ目を閉じた。

何も考えたくなかった。
何も感じたくなかった。

静かに唇を噛み締め、頭の中を空白にする。
このまま時間が過ぎ去ればいい。
何もかもが夢だったと、朝になれば消えてしまえばいい――。

しかし。

それは、許されなかった。

熱を帯びた視線が玲奈の肌を這い、鋭い悪意が空気の中に満ちている。
彼らは、玲奈が沈黙することを許さない。

静寂の中、誰かが笑う声がした。

「……まだ、現実を認めないつもりか？」

玲奈は、わずかに肩を震わせた。

玄蛇だった。

彼の仮面の奥から放たれる冷たい視線が、玲奈の心を締め付ける。

「お前の時間は止まらない。」

玲奈は、拳を強く握る。

――このまま耐えれば、終わるの？

そう思いたかった。
しかし、現実は甘くはなかった。

歓声が、耳をつんざくように響く。

観客たちは、期待に満ちた瞳で玲奈を見つめていた。
彼らは待っている。玲奈が沈黙を破る瞬間を。

そして――。

鋭い痛みが、玲奈の意識を現実へと引き戻した。

「っ……！」

彼女の唇から、小さく息が漏れる。

それだけで、観客たちの歓声が一段と高まった。

「ほう……ようやく、現実を感じたか？」

玄蛇の声が、玲奈の耳を打つ。

玲奈は、歯を食いしばる。

――違う。

私は、抗わなければならない。

しかし、その抵抗をあざ笑うように、目の前の男が歪んだ笑みを浮かべた。

巨漢の男。

玲奈を競り落とした、醜悪な初老の男。

「ハハッ、いいな……！やっぱり、お前は素晴らしい！」

彼の分厚い唇がねっとりと歪む。
玲奈の反応をひとつひとつ楽しむように、彼は満足げに目を細めた。

「さっきまであんなに強がっていたのになぁ……！」

嬉々とした声が響く。

玲奈の身体が小さく震える。

観客の熱狂がさらに増す。

彼らは、玲奈の苦悶を楽しむ者たちだった。
玲奈の抵抗すら、彼らにとっては娯楽に過ぎない。

玄蛇は静かに微笑んだ。

「お前は、まだ抗うか？」

玲奈の意識が、深く沈んでいく。