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第12章 終わりなき闇の序曲

第12章第2話 「終わりなき競売」

玲奈の意識は、まるで漂流する小舟のように揺蕩っていた。
鈍い痛みが身体にこびり付き、遠くから聞こえる喧騒が、現実との境界線を曖昧にする。
（まだ終わらないの…？）
喉の奥で呟くが、それは声になることはなく、意識の海へと溶けていく。
玄蛇が、静かに手を上げた。
その仕草は、まるでオーケストラの指揮者のようであり、観客たちは、これから始まる狂騒曲を待ち構える聴衆のようだった。
「次の競売を始めよう」
玄蛇の声が、静寂を切り裂いた。
場内は一瞬静まり返り、そして、次の瞬間には、爆発的な熱狂が渦巻いた。
観客たちは、待ち焦がれていた獲物を目の前にした獣のように、興奮を露わにする。
（まだ続くの…？）

玲奈は、重い瞼を持ち上げようとしたが、叶わなかった。

目を閉じても、閉じ込められた空間の中でも、観客たちの歓声と、熱い視線が、まるで鎖のように玲奈を縛り付ける。

時間感覚は麻痺し、今がいつなのか、自分がどこにいるのかさえ、分からなくなっていく。

競売が始まった。
男たちは、まるで玲奈の価値を競い合うかのように、次々に金額を釣り上げていく。
玲奈は、人間ではなく、ただの品物、無機質な数字として扱われる。
男たちは、玲奈を手に入れることを、自らのステータスであるかのように誇示し、興奮を抑えられない。

玄蛇は、その光景を静かに見下ろしていた。
仮面の奥に隠された表情は窺い知れないが、その視線は、まるで玲奈の反応を観察しているかのようだ。

（お前は、まだ抗うつもりか？）
玄蛇は、心の中で呟いた。

玲奈の抵抗が、いかに無意味であるかを証明するかのように、競売は、終わりなく続いていく。