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蛇の檻
第2章 『蛇の檻』 第二章 ――月の宴(つきのうたげ)
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誰のものかも分からない指が、冷たく、熱く、柔らかく、強く――
肌の上をすべるたび、怜奈は震えた。
「……っ……!」
息を詰める。
彼らの指は、まるで彼女の身体の曲線を”確かめる”かのようだった。
肩のなめらかなラインを辿る手。
腰のくびれをそっと撫でる手。
髪の流れに沿って指を滑らせる手。
台が回る。
触れる。
確かめる。
観賞する。
「……やめてください……」
震える声で懇願する。
だが、男たちはただ無言のまま、手を這わせ続ける。
「怖がることはない」
仮面の男が囁く。
「お前は、ただ”自分”を知ればいい」
――自分?
触れるたびに、怜奈の肌が粟立つ。
恐怖なのか、それとも別の何かなのか。
指が喉元をなぞる。
別の手が、背骨を伝うように滑る。
膝のあたりを掠める指がいるかと思えば、肩を静かに押さえる掌もある。
「……っ……!」
一瞬、体が仰け反る。
今、どこに触れられているのか。
どこからどこまで、何人の指が肌を辿っているのか。
分からない。
分からなくなる。
視界が揺れる。
台は回り続ける。
無数の仮面。
露出した口元が、嗜虐的な笑みを浮かべているのが見える。
「……違います……」
怜奈は必死に否定する。
「私は……私は……!」
だが、身体はどうだ?
頬を伝う冷たい感触。
背筋をなぞる指先。
衣を纏わぬ肌に伝わる、他者の熱。
台が回る。
仮面の奥の瞳は、怜奈の変化を見逃さない。
「お前の役割は、まだ決まっていない」
仮面の男がゆっくりと歩み寄り、怜奈の顎をそっと持ち上げた。
「選ぶのは、お前自身だ」
怜奈の瞳が、月光を反射して震える。
選ぶ――?
何を?
抗うのか、受け入れるのか。
支配されるのか、それとも――支配するのか。
この檻の中で、彼女は”答え”を見つけなければならなかった。
第二章 完
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