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蛇の檻
第17章 最終章 『神は消える』
『神は消える』

静寂の中、玲奈はゆっくりと手を伸ばした。
細くしなやかな指が、玄蛇の手をそっと包む。

彼は動かない。
ただ、その冷たい指の感触を確かめるように、玲奈の手を見つめていた。

「私を信じるの?」

玲奈の声は静かだった。
どこか遠くから響く鐘の音のように、静かに、揺るぎなく。

玄蛇は玲奈を見つめた。
今まで幾度となく見てきたはずの、その顔。
その瞳。

だが、今の玲奈は違っていた。

彼が「神」として扱ってきた玲奈ではない。
彼が「所有しようとした玲奈」でもない。

彼の知る玲奈は、すでに彼の手から離れていた。

彼は言葉を失う。

玲奈は、そっと微笑む。
その笑みは、今まで彼が見たどの微笑みとも違っていた。

優しく、穏やかで、何も恐れていなかった。
玲奈は、もう何者にも囚われていない。

ゆっくりと、玲奈は彼の前に立ち、そっと彼の額に唇を寄せた。

その瞬間。

玲奈の身体が、光となって消え始めた。

淡い輝きが、彼女の輪郭を溶かしていく。
髪が、指が、肌が、
すべてが、光の粒となり、空気に溶け込んでいく。

「待て……玲奈……」

玄蛇の手が玲奈を掴もうとするが、
指先はただ虚空をかきむしるだけだった。

「玲奈……玲奈……!」

彼は玲奈を呼び続けた。
しかし、彼女の声はもう返ってこない。

──玲奈は、どこにもいなかった。

彼女はこの部屋から消えた。
この世界から消えた。

だが、それは「消滅」ではなかった。

玲奈は、玄蛇の中に永遠に生き続ける。

彼はどこに行こうとも、玲奈を忘れることはできない。
玲奈の姿が、声が、微笑みが、
彼の心の奥深くに刻まれ、決して消えることはない。

玄蛇は、玲奈を失った。

そして同時に、玲奈を永遠に手に入れた。

彼は震える指で顔を覆い、
声にならない嗚咽を漏らした。

そして、笑った。
苦しく、哀しく、
それでいて、どこか満たされたように。

「……やっと、お前を手に入れたよ、玲奈。」

玲奈はもういない。
だが、彼女は確かにここにいる。

それは、彼の心の檻の中で、永遠に微笑む玲奈。

END.
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