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第4章 柊玲奈の生い立ち――檻へと至る道

玲奈は、厳格な家庭で育った。

父は冷酷な男だった。

支配的で、家の中のすべてを支配し、女を下に見ていた。

「女は黙って従えばいい。余計なことを考えるな」
玲奈は、そういうものなのだと受け入れた。

父の言葉に逆らったところで、何も変わらない。

玲奈は、ただ静かに従い、余計な感情を押し殺して生きてきた。

だが――玲奈には、たった一つだけ大切なもの があった。

母だった。

玲奈の母は、美しく、優しかった。

いつも静かな微笑みを湛え、玲奈の頬にそっと手を添えてくれた。

父とは違う、温かく穏やかな存在。

玲奈にとって、母は唯一の「愛」だった。

しかし、玲奈は知っていた。
母は、決して自由ではなかった。

母は、父に逆らうことができなかった。

玲奈が幼い頃から、それはずっと変わらなかった。

母は、ただ黙って従い、父の命令に逆らうことは決してなかった。

だが、母は玲奈にだけは違うことを教えた。

「玲奈……あなたは気高く生きなさい」
それは、母の口癖だった。

「私のようになってはいけない。誇りを持って生きるのよ」

母は、自分が夫に支配される人生を歩んできたことを悔いていた。

だからこそ、玲奈には「誇り高く生きてほしい」と願い、そう教育した。

玲奈は、その言葉を心に刻んでいた。

母のようにはならない。

誰にも支配されない。
そう、誓っていた。

だが――それが、どれほど無力な願いだったのかを知ったのは、あの夜だった。