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好色なる一族
第2章 発情
2025年の桜の季節は終わりを告げようとしていた。ある晴れた日の午後のこと。今日は南風が強く、大岩邸の庭にある大きな桜の木から残り少なくなった花弁が吹雪のように舞っていた。大五郎は和服姿で縁側からそれを惜しむように眺めていた。隣りには秘書の榎本香が黒い上下のスーツ姿で控えていた。

「そうだ、香。あの桜散る中でおまえのヌードを撮ろう」
「先生、ご冗談をやめてくたさい」
香は思わず噴き出した。
「まじめな話だ。来年の桜の季節にわしは生きてるか分からん」
「まだそんなお年じゃないでしょ?」
「いや75だ。いつ逝ってしまってもおかしくない」

枝は花より葉のほうが多くなっていた。それでも桜吹雪があればヌードには十分だった。

「どなたかいらしたらどうします?」
「今日は誰も来る予定はない。さあ、わしはカメラを持ってくる。おまえは庭に出て服を脱ぎなさい」
そう言って大五郎はカメラを取りに行った。

榎本香は43歳。それでもまだまだボディラインは崩れず熟女もののAVに出てもおかしくないくらいの色気を漂わせていた。すでに大五郎の愛人であるのでヌードになることに抵抗はない。それでも屋外で裸になるのは旅行で露天風呂に入ったときぐらいだ。住宅地でいくら四方を塀に囲まれ覗かれる心配がないにしても、やはり戸惑いはあった。

「何だ、まだ裸になっていないのか?」
大五郎が戻ってきた。
「実はカメラは見当たらなくて、仕方ないからスマホで撮ることにしよう」
「スマホ?もし誰かに見られたらどうするんですか?」
「誰がみるんだ?」
「例えば落としたり・・・」
「心配ない」
「警察に提出を求められたり・・・」
「警察?わしが何か悪いことでもしているのか?」
「いえ・・・」

「わしはな、一度だって法に触れることはしたことなんかない。それどころか、国家国民のために命を捧げて働いてきたんだ」
大五郎の機嫌が少し悪くなった。
「ごめんなさい。失礼なことを言いました」
「いや、いいとしよう。それよりも早くヌードになれ」
「わかりました」
香は抵抗しても無駄だと悟った。
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