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1995 Winter 俺の初体験の相手は32歳
第4章 I've fallen in love.
寒いというほどではないが、温かいということもないという微妙な温度。少量しかでないシャワーを分け合い、追い焚きの湯が冷たくなった湯船の水と混じり、モヤモヤとしている様子を湯船の淵に並んで見ていた。

狭いバスルームの湯船の淵で肩を寄せ合い、まるで、恋人のようだった。

「佐久間くんって、女の子に興味がないと思っていたわ…」

話し始めた美濃里。そんなことはない…。ゲイでもないし…。

「どうして?」

俺が尋ねると、

「支店内で女子社員と話しているところを見たことがないし、保険の外交員や、ヤクルトレディとも話しているところを見たこともないから。それに、休憩室でも、グラビアとか見ている雰囲気もないし、夜のお店の話にも加わっていないし…」

と、説明する美濃里。俺は、観察されていたことに驚いた…。たしかに、いろいろな場面で小さい支店ということもあって、出くわすのだが、こっちは、言われたら居たなくらいの感覚なのに、ここまで観察されていたとは…。そんな感じだった。

「そんなに俺が気になるんですか?」

極力、平静を装って話した。内心は、結構、疑問と疑念、気持ち悪さのようなものを感じていたが…。

「気になるんじゃなくて、浮いているから…」

笑う美濃里。浮いている?

「下ネタで先輩たちが盛り上がっていて、わたしなんか、セクハラって思うとき、いつも、佐久間くんって、居心地が悪そうだし、会話に参加しないし、その場から逃げ出すでしょ」

説明する美濃里。たしかに、思い当たる節はあり過ぎるくらいにあった…。自分では自覚していなかったけど、浮いているように見えていたというか、浮いていたのだろう…。

「単に、グラビアアイドルとか、風俗とかには興味がないし、アルコールは飲めないから、飲み会とかコンパとか興味がないだけですよ」

俺は、素直に答えた。実際、そうなのだから、スラスラと言葉が出てきた。

「だから、安全だと思ったのに、まさかの送り狼」

笑う美濃里…。送り狼と言いながら、笑う美濃里に、大人というか歳の差の貫禄というか、いろいろなものを感じた…。
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