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1995 Winter 俺の初体験の相手は32歳
第5章 導かれし者
「覚えていないんですか?」

俺が敢えて大袈裟に驚くと、

「記憶にございません。佐久間くんが指を入れていて、その刺激で目が覚めたって感じだから」

と、クスッと笑う美濃里。

「マジで?」

尋ねると、頷いて、

「寝始めると、記憶がないのよ。酔っぱらうと、そもそも記憶がないし。覚えているのは、佐久間くんを捕まえて、『送って』って頼んで、パーキングに行って、乗せてもらったあたりくらいまで」

と、話す美濃里。

「それに、忘年会の出来事もあまり覚えていないわ。ふと、気が付いたら、『宴もたけなわでございますが』という声が聞こえて、終わりってわかって、店の前で、ふと目を開けたら、佐久間くんがいて、この子なら大丈夫だって思って、声を掛けたのよ」

と、話を続けた…。

「大丈夫じゃなかったけど」

と、笑って、

「あ、わたしが悪いのよね…。佐久間くんを誘ったから」

と、また、笑った。仕事中はあんなに謹直な感じで冷静で、とっつきにくいのに、プライベートはこんなに笑う…。

「前野さんが、こんなに笑う人だとは知りませんでした」

俺が話すと、

「笑わないわよ。わたし。なぜか、佐久間くんの前だと、笑えるというか、楽しいのよ」

と、美濃里は話して、握っている俺の手を、さらに強く握った。

「早く帰ってエッチしましょう。さっきから、ここがグチュグチュなの」

美濃里は笑いながら、陰部を指さした。

「前野さんが、そんなに淫乱だとは思わなかった」

敢えて俺は、そういうことを言った。

「淫乱?違うわ。淫乱だったら7年も我慢できないわ。そもそも、エッチは好きじゃなかったから。だって、痛いイメージしかなかったのよ。あなたが入れるまで」

美濃里はそう言って、俺を見つめた…。そして、

「相性がいいのかも」

と、笑った。それは、俺も同感だった。と言っても、俺はこのとき初めてだった。しかし、美濃里以外に、相性がいいと思う女に終ぞ、出会うことは、今日まで、なかった…。

最初が最良の相性だったということになっている。
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