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1995 Winter 俺の初体験の相手は32歳
第10章 上書き保存
片付けが終わると、美濃里は、俺の手を引っ張って、リビングルームのベッドに、俺を座らせて、

「佐久間くんと、エッチできる関係になれて…」

と、言って微笑む美濃里。異性に、正面からこんな言葉を伝えられて、俺は気恥ずかしさしかなかった…。

「わたしにとってエッチって『負の遺産』みたいなものだったの。わかる?」

尋ねる美濃里。わかるような気がした。美濃里にとって過去のエッチは、全部、行方不明の夫とのエッチ。

俺が頷くと、

「だから、ツラい思い出でしかなかったから、ずっと避けていたの…」

と、話す美濃里。

「佐久間くんが、それをこじ開けたというか、強行突破して…」

俺には頭を掻くことしかできなかった…。

「男ってみんな、こんな感じなのねって思ったけど、佐久間くんと、過ごして、違うって思えるようになった」

噛みしめるように話す美濃里…。

「旦那さんとは、どんな感じだった?」

俺は極力、刺激しないように言おうと思ったけど、難しかった…。沈黙する美濃里…。






俺の方が、この沈黙の時間に耐えられなくなって、

「思い出したくないのなら、やめよう、この話…」

と、言い出したが、

「聞いて…。あの人のエッチは…」

「初めて出会ったのは、友人の結婚式だったわ。大学時代の友人。その結婚式で、新郎側の席にあの人はいたわ。二次会も出席していた。友人の新郎は有名商社の社員だったわ。あの人は、『新郎の高校、大学、そして、今も同僚』だと話していた」

と、エッチの話から始まるのではなく、出会いから語り始めた美濃里。やはり、いきなりエッチからというのは抵抗もあるし、俺も、できれば、二人がどういう出会い方をして、そういう関係になってとかも知りたいと思った。

「だから、てっきり、有名商社の社員だと思っていたけど、事実は、高校、大学の友人というだけだった。とは言っても、高校も大学も一流だった。そう、ヤクザでも、インテリヤクザというジャンル。武闘派という感じではなかったわ。でも、わたしのヤクザのイメージは菅原文太さんとか、梅宮辰夫さん、竹内力さんだったから、想定外」

話しながら苦笑する感じだった。この前年、『新極道の妻たち 惚れたら地獄』が公開されていた。近くのTSUTAYAで紹介VTRくらいは見た記憶があった。そう、ヤクザのイメージはあんな感じだった。
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