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1995 Winter 俺の初体験の相手は32歳
第10章 上書き保存
テレビデオの映像を見ながら、他のことも考えていた。それは、離婚届を美濃里の行方不明の夫が送付していたこと。であれば、離婚はすぐにでもできたということ…。いや、行方不明の夫は離婚を望んでいたのに、美濃里は敢えて、それを提出せずに、今に至っているということ。

それほど、未練があるのか…。ということを、俺は考えていた。

この映像を俺は越えて、上書きできるほどの何かを美濃里に残さなくては、美濃里は、ずっと、この男のことを忘れることはないということを痛いほど、俺は感じていた…。

しかし、当時の俺に理解できなかったのは、なぜ、男がエッチのなかで美濃里の肛門に指を揺れたのか?意味がわからなかった…。

当時は、アナルセックスなどは想定外だった。それに、今ほど、情報が氾濫している時代ではなかった。インターネットは普及していなかった…。

通信手段は、ポケベルからPHSに代わり始めたばかりだった…。インターネットはメール専用に近かった…。アナルセックスというアブノーマルな世界に俺の手は届いていなかった。

いろいろ考えている間に、映像は先へ進んでいた。


ああぁんっ…んっ…あああっ!!!


美濃里の叫ぶ声が聞こえ、

「気持ち…いっぃぃぃ!!!」

と、続けて叫ぶ美濃里の声が、テレビデオのスピーカーから響いた。イキ果てたのか、美濃里がベッドに倒れ込んだ。

「おいおい、まだまだ、これからだぜ」

男の声が響く。

「おい、みのちゃん。便秘なのかい?」

男の声…。ベッドの上で突っ伏している美濃里。返事した様子はなかったが、男はお構いなしに、ベッドでへたり込んでいる美濃里の肛門に何か、淡いピンク色の物体を押し込んだように見えた…。

男が部屋にあった屑籠に何かを捨てた…淡いピンク色の小さい容器…。覚醒剤?ヤクザだという先入観だったかもしれない。

美濃里が微かに、顔を横に向けて、

「な、なに?何をしたの?」

慌てている感じがした…。やはり、覚醒剤?と思ったが、男が、

「便秘なんだろ?浣腸だよ」

と、言って笑った。不敵というかニヒルな嗤いだった。身体を起こして、立ち上がろうとする美濃里…

「まだ早い!」

男が美濃里の身体を押さえ付けた。
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