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さくらドロップ
第2章 まるで蜘蛛の糸に絡め取られた蝶のように
 一方で、無口で無表情、無感情に無感動な金髪くんは、私が無理矢理その口に別のものを突っ込まないと、始終卵焼きばかり食べている。一応一度口に入ったものは食べてくれるので、ぐいぐいと押し込んでおく。嫌な顔一つしないけど、一体どう思っているのやら。
 そうこうしている内に、重箱の中は綺麗になくなっていた。高校男子、やはりよく食べる。これで持参のお昼も食べてるんだから、一体どんな胃袋してるのか。たくさん食べるくせに、体はすっきりしてるんだから、羨ましいったらない。
 食べ終われば、金髪の彼は完全にゲーム機へ集中してしまう。黒髪の子は、何やら分厚い難しそうな本を机から引き出して読み始めた。こいつらには食後、会話を楽しむという発想は皆無らしい。
 仕方が無いので私の方から一方的に話しかけたりする。

「ねーねー、何してるの?」
「多分モンハン」
「それいつ終わる?」
「基本的に終わりはない、エンドレス」
「私もそれ買おっかなー。それなら一緒にできる?」
「できるけど無理。そいつすっげー廃だから、俺でもついていけねーし」

「……私この子に聞いてるんだけど」
「答えねーといつまでもうっせーから俺が代わりに答えてやってんだろ!」

 わかったら少し黙れ、と呆れたように漏らす黒髪。むう、と不満から唇を尖らせたけど、何の反応もみられないので、机にうつ伏せて大人しく黙る事にした。
 忙しなく響くボタンのかちかちという音と、時折する本を捲る音。背中からは昼休憩の賑やかな喧騒が聞こえる。なんだかここだけ空間を切り取られたみたいだ。
 二人には二人の独特の空気がある。そこで二人はあっと言う間に二人だけを作りだしてしまって、一切他者を寄せ付けない。かといって二人はその空間で共存してるわけじゃなくって、それぞれがまた個々の空間にいて、互いを干渉し合わない。
 その境界ぎりぎりの所に私はいる。二人の見えない壁を叩いて蹴って、懸命に中に入ろうとするけれど、直ぐに弾き返されてしまう。
 蚊帳の外。部外者。環境に慣れただけで、私はまだ仲間ではない。

「ねー、名前、なんて言うの」

 呼びかける事も、呼び止める事も、今の私には出来ない。
 私の存在を沢山沢山アピールしても、彼の事が知れないのなら、そこに意味はあるのだろうか。
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