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檻の中の花嫁
第1章 宿命
湯気が立ち込める浴場。広々とした湯船には、滑らかな石畳が敷かれ、名家の格式を感じさせる。

その端に、澪は裸のまま座らされていた。
湯の温かさが肌を包むはずなのに、彼女の心は凍えるように冷たかった。

「お前の母親は、この家の花嫁になるはずだったんだよ。」

老婆はゆっくりと語り始めた。湯をすくい、澪の肩に流す。

その手は、まるで彼女の身体を品定めするかのようだった。

「あの女は、代々この家に仕える家系の出だった。」

「この家の正統な後継者と結ばれるために生まれ、花嫁になる運命だったのさ。」

湯がさらさらと澪の肌を流れる。だが、老婆の言葉は、その温かさとは対照的に冷たいものだった。

「それなのに——身分違いの男と恋に落ち、子を宿してしまった。」

澪の喉がひくりと動いた。息を呑む音すら、浴場の静寂の中に響いた。

「名家の嫁となる女は、純潔でなければならない。」


老婆の手が澪の首筋をなぞる。その指先は、まるで彼女の運命を刻みつけるようだった。

「しかし、お前の母親はその掟を破った。」

老婆はため息混じりに言い、今度は湯を澪の背中に流した。

その手は、湿った肌を滑るように撫で、肩甲骨から腰へとゆっくりと下がっていく。
澪は強張る身体を動かすこともできない。

「だから、こうして、娘であるお前が選ばれたのさ。」

「お前の母親が逃げた分、その役目はお前に回ってきた。」

老婆はにやりと笑う。まるで運命そのものを見下ろすかのように。

「お前の血は、捨てられるには惜しい。」

老婆の手が、澪の腕をなぞる。

その指は細く、骨ばっているのに、澪の肌をしっかりとつかんで離さなかった。

「お前の母が果たさなかった役目を、お前が果たすんだよ。」

老婆の声は、まるでそれが当然であるかのように淡々としていた。

湯の中に澪の指が沈む。爪が震えるほどに、冷たく感じた。
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