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檻の中の花嫁
第1章 宿命
「お前の母親がこの家の嫁になれなかった理由?」

老婆はくつくつと笑った。

「あの女は、お前のように美しかったよ。」

「そして、その血筋は特別だった。」

老婆の手が澪の背を滑り、軽く押さえつけるようにする。

「この家の男と結ばれ、その血を正しく継ぐことが定められていたのさ。」

「お前の母親が、この家に嫁ぐことは決まっていた——それが、生まれた瞬間からの運命だったんだよ。」

「それなのに、母親は逃げた。」

老婆の口調には、嘲笑が混じっていた。

「恋に溺れ、身分違いの男の 子を孕んだからね。」

「それがお前さ…」

老婆は笑い、ゆっくりと湯をすくい、澪の髪にかけた。

「……でもな、お前の母が逃げても、血の価値は変わらない。」

「だから、お前がこうしてここにいるんだよ。」

老婆の指が、澪の顎を軽く持ち上げた。

「母親が拒んだ運命を、お前が引き受けるんだ。」

「それが、名家の掟さ。運が悪かったと思うしかないねぇ。」

老婆の手が、澪の頬を軽く叩く。
にやりと笑いながら。

澪はただ、湯の中で震えながら、己の運命を呑み込むしかなかった——。
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