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俺の瞳にうつしたいものは
第3章 3

✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
Tシャツに着替えて階段を降り、バイクにキーをさす
グリップを握って跨ろうとした時だった
「あれ、俊くん?」
背後から聞き慣れた穏やかなトーンの声が聞こえた。
「あ……」
振り返ると
髪をゆるく束ねた中年女性が手を振っている
ひとみの母親の里見さんだった
「ご無沙汰してます」
「元気そうでよかった、背も伸びて……」
「あの
ひとみは……元気ですか」
軽く会釈しながら、気まずさを飲み込んで尋ねると
里見さんは寂しそうに笑う
「ごめんね。
あの子、なかなか学校行かなくて……
聞いても何も教えてくれなくて。
俊くんにも会わないなんて、困った子ね……」
「いや、俺の方こそ……
何もできなくて」

