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愛の時間 ○○連発
第62章 見知らぬ男に抱かれる女

「すいませんでした!
気分を害されたのなら謝ります」

「別に怒ってなどしてませんから」
どうぞ放っておいてください。と言葉を繋ぐ前に
「お詫びとしてランチをご馳走させてください」
往来のある商店街で深々と頭を下げるものだから、道行く人々が何事かと二人を見ながら通りすぎてゆく。

「すいません、頭を上げていただけませんか?」

「いえ、ランチのお供をしてくれると言ってくれるまで頭をあげるつもりはありません」

そう言って彼はさらに腰を折って土下座でもしかねない様子だった。

「わかりました…ランチのお供をすればよろしいのね…」

これ以上、通りすぎてゆく人々の視線に晒されるのはかなわないと、弥生は彼の申し出を受けることにした。

「よかった…ランチを独りで食べるというのは味気ないですからね…少し強引だったかもしれませんが、貴女のようなレディとランチを共に出来るなんて夢のようです」

饒舌な男だと思った。
とりあえずはランチだけ共にして、何か理由を考えてそそくさとお別れした方がいいと思った。

彼に連れられて行ったお店は、
レストランというよりも格式のある料亭のようなお店だった。

『いやだわ…持ち合わせのお金で足りるかしら…』

メニューを見ながら、弥生は財布の中身と相談した。
なるべく安いものを…
そう思ってメニュー表を捲ってみたが、一番安価な日替わりランチでも7,000円もしたのだ。

「ここはね、和定食が美味しいんですよ」

弥生の懐具合などお構いなしに、彼は10,000円もする特上和定食を二人分注文した。

「私、和装だし、帯がしんどくてそんなに食べれないです」

「食べれるだけで残してもいいんです
私がお誘いしたんだから、ここは私にご馳走させてくださいな」

食前酒として梅酒が用意され、盃を空けると空腹だった胃袋にアルコールが流し込まれてカーッと体が熱くなった。

「もちろんご主人がおられるんですよね?」

左手の薬指に光るダイヤの指輪を見つめながら、彼はさりげなく弥生に亭主がいるのかと訊ねた。

「ええ、もちろん」

「失礼ですが、そのお召し物といい、指のリングといい、裕福なご家庭のようですね。ご主人のお仕事は何をされているんですか?」

「一応、大学の教授を…」

「そうですか、やはり品があると思っていたんです」
爽やかな笑顔がニヒルな微笑みとなった
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