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淫らに舞い堕ちる花びら 宮澤舞凪
第1章 はじまり
3駅を通過して、次の停車駅。この駅は乗換駅になっているから結構な人が乗ってきた。オジサンの姿は見えなくなった。

この駅では発車まで1分ほど待つ・・・。車掌さんのいる後部から窓を見ると、ホームを歩いていく人影が。そちらにも階段を降りると改札があることは知っていた。そこへ向かう人影。あのオジサンがいた。そして、振り返って、舞凪を見てニヤッと笑った。気持ち悪い。舞凪は目を背けた。

電車が出発した。少し安心した。もう、この車両にあのオジサンはいない。夏期講習をしている塾の最寄り駅で降りた舞凪。明日からはもっと早くに家を出て、早い時間のバスに乗って、早い時間の電車で。そう思った。

夏期講習自体は、平凡だった。名物講師と言われる男性の講師の話はわかりやすく、面白く、頭にどんどん知識が入ってくる感じだった。帰るころには、平静を取り戻した舞凪。

時計は午後九時三十五分。塾の最寄り駅で電車を待っていた。火曜日の夜。仕事帰りのサラリーマンやOLと、舞凪のような塾帰り。あとは、部活帰りの高校生。そんな感じだった。あのオジサンが降りた乗換駅までは、塾の友達と一緒だった。他愛もない話をしながら過ごした舞凪。

乗換駅。友達が降りて行く。手を振って別れた舞凪。友達が歩いていく先に、あのオジサンがニヤニヤ笑いながら、舞凪を見ながら歩いてきた。ゾゾッとする舞凪。舞凪は知らないが、塾の夏期講習の予定は、入塾希望者のために塾のWEBページで確認できた。そう、オジサンには舞凪の行動は把握されていた。夏期講習の終了時間がわかれば、何時ごろの電車に乗って、何時ごろにこの駅に到着する電車に乗っているか、推測は容易だったのだ。

それを知らない舞凪。底知れぬ恐怖を感じた。このままだと、帰りのバスまで一緒になる。持たされているスマートフォンを起動させて、LINEで最寄り駅まで迎えに来てもらうようにメッセージを送った。この時間なら、お父さんが帰宅しているはず。ありのままに送った。変なオジサンがいること。塾の往復、一緒になっていること。バスの中での出来事も。

最寄り駅までは、人がいっぱい。オジサンも近くにいたけど、接触はしてこなかった。LINEの返信が来た。

≫バスで帰りなさい

どうして???舞凪は泣きそうになりながら、

≫助けて!

と、LINEを送った。
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