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わたしの昼下がり
第2章 オトナの付き合い
 事を終えてタバコに火を付けた△井がわたしに声を掛ける。わたしは股を閉じもせずただ『ハァハァ』と息を荒げているだけ。何度もアクメさせて息も絶え絶えの女にそんなことを訊くなんてずるい…と思ったけど『男をくわえ込みたかったんです。是非、また来てください』などと言わずに済んだのは△井のせめてものの気遣いだったか。わたしが久しぶりのアクメを味わっているのは一目瞭然だったろうから…。

 別にわたしは△井に何かモーションをかけたりした訳ではなかった。でも、気が付いたらそういうことになっていた。もちろん無理やり押し倒されたりした訳ではない。まさにこちらの『心理』が読まれた上でのなりゆきだったと思う。□田さんにはちょっと悪い気もするけど、△井の眼にはわたしの方が好みに映ったのだろう。

 『心理が読まれた』とはきれいごとに過ぎるだろうか。のしかかられて『奥さん、ヤリたかったんでしょ?』と囁かれても、特に抵抗も抗弁もしないでそのまま男根を受け容れたのだから。

 『一目見て奥さんとは『オトナの付き合い』ができると思ったんですよ。思ったとおりでした』

 さも物欲しそうな貌をしていたのだろう。要は『都合のいい女』と見られたのだろうが、それでも構わないと思った。今度来る△井が、奥さま連中に見とがめられないことを願った。みんな悪い人じゃないけど、『オトナの付き合い』を黙って見過ごしてくれるようには思えないから…。

 『ご主人『○○○〇〇〇』お吸いなんですね。ボクも今度からこれにしますよ』

 確かに灰皿に自分が吸わない銘柄の吸い殻があったらおかしいし、タバコの香りも多分違ったりもするのだろう。夫の嗅覚がそこまで鋭いようには思えないけど、細心の注意を払って忍んでくれそうな△井に心も少し動いてしまった。身体だけでなく…。△井なら奥様連中の眼もかいくぐってくれるだろうと思った。

 (今度はいつ…?)

 そう思うわたしの心理を読んでくれたのだろう。△井が囁く。

 『明日にでもまたお邪魔したいのですが、人目については奥さまも御迷惑でしょうから…そうですね…2週間後くらいにまた…』

 (2週間…)

 △井がドアを音もたてずに閉めて出て行く。わたしはまだうずうずと疼く秘部のぬめりを拭ってはゴミ箱に捨てると、壁に掛かるカレンダーを眺めていた。
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