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愛の笛
第11章 葉子との再会
窓から逃げよう!
葉子が窓ガラスに目をやった。
窓ガラスは、固いガラスがこれほどまでに膨れるのかというほど内側に向かって膨張していた。
必死に耐えていた窓ガラスだったが、流木が当たった瞬間、
限界ギリギリだったガラスは木っ端微塵に割れた。
一気に水流が室内に流れ込んでくる。
みるみると水位が上がり、天井に頭ひとつだけかろうじて空間が出来る有り様であった。
葉子はベッドの上につま先立ちになって必死に呼吸をした。
それもつかの間で、室内は願いもむなしく濁流の中に沈んだ。
呼吸が続かない…
ああ、私はここで死ぬのだと覚悟を決めた。
脳裏に草薙の笑顔が浮かんできた。
ここに彼が居てくれたらおもいっきり抱き締められて命を終えたいと願った。
。。。。。。。
水流に抗い、必死の思いで草薙は協力隊の宿場へたどり着いた。
そこで見た光景は目を疑うものだった。
完全に寄宿舎は水没して、協力隊の面々は屋根に上がって助けを求めていた。
『葉子は?葉子はどこだ?!』
屋根の上で助けを待つ面々は男ばかりで、そこに葉子の姿は見当たらない。
「おお~い!みんな無事か?」
「あっ!草薙くん!無事だったかい?」
協力隊のリーダーである越中さんが、草薙の姿を見つけて大きく手を振る。
「待っていてください!今すぐ助けますから!!」
幸いなことに高台に設置された資材置場は水没から免れていたので、そこからロープを取り出して、資材置場の柱にくくりつけると、もう片方のロープの端を自分の体に巻き付けて草薙は再び水流に飛び込んだ。
水流に呑み込まれそうになりながらも、何とかみんなの元へとたどり着いた。
「さあ、このロープをつたって、あの高台まで避難してください
ところで越中さん、葉子を見ませんでしたか?僕の部屋で寝ていたはずなんです」
「何度かドアを叩いて起こそうとしたんだが応答がなくて…
すぐさま増水してきてドアを開けることもままならなくて…」
じゃあ…まだ部屋に?
協力隊の面々の避難を越中に任せて
草薙は自分の部屋の上から屋根の天板を剥がそうとした。
簡易なプレハブで建てられた宿舎だが、天板は思いのほかしっかりと打ち付けられていてビクともしない。
なにか…なにか道具があれば…
ポケットにドライバーか何かないだろうかと手を突っ込むと
上着の内ポケットに例の笛があった。

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