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愛の笛
第11章 葉子との再会
何もないよりはマシだろうと
草薙は笛を天板に叩きつけた。
笛の強度にも限界がきたのか、ピキッとヒビが入った。
頼む!お前だけが頼りなんだ!!
渾身の力を込めて打ち付けると、笛は見事に真っ二つに折れた。
だが、おかげで天板が捲れかけた。
指を掛けて力一杯に引くと何とか天板の一枚だけ剥がすことができた。
その下には部屋の天井板があったので、これでもかと踏みつけるとバキバキっと天井板が割れた。
「葉子!!」
すでに水は部屋いっぱいに溜まっていて
その水中に漂う女の姿を確認した。
すぐさま部屋に飛び込んで漂う葉子を引きずりあげた。
もとより白い肌は血の気を失い青白くなっている。
「葉子!葉子しっかりしろ!」
頬を二三度ペシペシと叩いたが反応がない。
指を彼女の頸動脈に触れて脈を確認すると、指先にはドクドクっと血流を感じる感覚がない。
耳を彼女の口元に近づけても呼吸がなかった。
「いかん!!」
草薙は葉子の豊満な乳房の上に両手を重ねるとフンフンっと力強く心臓マッサージを施す。
1.2.3…
30回胸骨を押さえ、すぐさま葉子の唇に自分の唇を重ねてフーフーと人工呼吸をする。
それを繰り返しながら、高台の資材置場に避難した越中に向かって「AEDを!AEDを!」と叫んだ。
「草薙くん!AEDはその寄宿舎の事務所に置いてあったんだ!
取りにいけないし、水没して使い物になるかどうかもわからん!」
「それなら救助を!救急車を!!」
ここが異国の未開の地であることさえ忘れて、叫びまくった。
「くそっ!くそっ!葉子戻ってこい!
逝くな!俺を残して逝くな!!」
心臓マッサージを開始して10分が経過していた。
蘇生の可能性は限りなく低くなった。

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