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愛の笛
第12章 プロポーズ
「いくらなんでもそれは…」
年頃の一人娘の世話を青年に任せる事に父親は躊躇した。
「葉子はどうなの?
彼のお世話になってみる?」
先ほどからこちらの会話を聞いていた病床の葉子が頬を染めて、はにかんでいるのを母親の咲子は見逃さなかった。
『この二人…もしかしてデキているんじゃないかしら?』
女としての勘が草薙の厄介になることで娘の記憶が戻りそうな気がしていた。
たとえ記憶が戻らないとしても、この青年に託すことで娘が幸せになってくれるのであれば、それはそれで喜ばしい事だと感じた。
「ねえ、あなた…せっかく草薙さんでしたっけ?彼がここまで申し出てくれるんだから、お世話になりましょうよ」
「えっ?お前、マジで言っているのか?
こんな見ず知らずの男に娘の世話をさせるつもりなのか?」
「私たちにしてみれば見ず知らずの男なのだろうけど…
葉子にしてみれば満更でもなさそうですわよ」
ねえ、葉子。草薙さんに生活の介助をしてもらいたいのよね?
そのように娘に問いただすと、葉子は頭から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にしながらコクリとうなづいた。
「いやしかし…世間体ってものがあるだろ。
ここはお金がかかるかもしれないが、ちゃんとしたヘルパーさんを雇った方が…」
渋る父親に母の咲子は目配せをした。
男って鈍感ね!そのような目配せに、ようやく父親もハッと気づいた。
「なるほど…そうですか
それではお言葉に甘える事にしようかな」
父親の許しが出て、葉子は訳がわからないけれど、なんだかとても嬉しくて「キャッ…」と恥ずかしそうな声をあげて布団を頭から被ってしまった。
「ご安心ください。彼女の部屋に寝泊まりする訳じゃないんですから、ちゃんとした彼女が就寝時間になればお暇(いとま)しますし、無料のヘルパーだと思っていただければ幸いです」
こうして葉子は退院して自分の部屋に戻った。

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