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愛の笛
第12章 プロポーズ
かくして葉子は草薙の世話になることとなった。
草薙は葉子の記憶が戻るまではと、ヤリちん男にしては律儀に葉子に指一本触れなかった。
ただ、一緒に食事して彼女の楽しそうな表情を見るだけでとても幸せな気分であった。
「それじゃあ、帰るから戸締まりだけはしっかりとね」
帰り支度を始める草薙の袖口をつまんで、
葉子は草薙を帰そうとはしない。
「葉子?」
「私、あなたとは恋人同士だった?」
「厳密には恋人関係ではなかったけれど…
でも、親密な間柄だったと僕は思っているよ」
「そうなんだ…
私ね…なぜだかわからないけれど、あなたと一緒にいるととても安心できるの」
袖口だけでは頼りないのか、帰したくないと
葉子はしっかりと草薙の腕にしがみついてきた。
「ダメですよ…
葉子のご両親からヘルパーとして君のそばにいることを許されているんだ。
だから一日が終われば僕は自分の部屋に帰るし、君は戸締まりをしてゆっくりと休むんだ」
草薙は思わず葉子を抱きしめたくなる思いを封じ込めて、
心を鬼にして彼女の手を振りほどいた。
「あなたはヘルパーだと言ったわね?」
「ええ、正式な資格はないけれど、
僕は僕なりに精一杯葉子のヘルパーを務めていると自負しているよ」
「それなら…ヘルパーの雇い主として命じます
私の入浴介助をしなさい」
命令口調でそのように言われると、
あの高慢ちきな葉子が戻ってきたようで、
草薙はゾクリとした。
「入浴介助って…葉子は記憶が曖昧なだけで、
四肢には異常がないんだから一人で入浴可能だろ?」
「バスタブに浸かるのが、何だかわからないけどとても怖いのよ」
多分、増水して溺れた事で体が覚えているのだろう。
入院中もシャワーしか出来なかったようだ。
「わかりました」
了承すると葉子の顔にパァ~と明るくなって笑みを浮かべた。
「入浴の準備が出来たら呼んでください」
脱衣して行く姿を見られるのは恥ずかしいだろうと、
準備が出来るのを脱衣室のドアを閉めて待つことにした。

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