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愛の笛
第12章 プロポーズ
「準備ができました」
「じゃあ、ドアを開けるよ?いいね?」
久しぶりに葉子のヌードが拝めると期待したが、
記憶が戻らない以上、どうやら草薙は見ず知らずの男性という認識なのか、葉子は体にバスタオルを巻いた姿で肝心のボディはしっかりとガードしていた。
『そりゃそうか…俺ってバカだな、何を期待していたんだ』
じゃあ、僕も入浴介助の準備しますねと告げると、
葉子は慌てて背を向けて草薙から視線を外した。
「大丈夫ですよ。ヌードになるわけじゃありませんから」
草薙は靴下を脱いで、ズボンの裾をまくりあげた。
「脱がないんですか?」
「ええ、入浴を見守るだけですからこれで十分です」
さっ、温かいお湯に浸かってのんびりするといいですよ
そのように告げると、葉子はつまらなさそうに頬を膨らませて「せめてエスコートぐらいしてくれたらどうなのよ」と手を差し出した。
「ハイハイ、わかりましたよ」
草薙は葉子と手を繋いでバスルームに足を踏み入れた。
バスタブのお湯を目にしたとたん、草薙と繋いでいた彼女に手にギュッと力が入った。
どうやら水が怖いというのは本当のようだった。
「大丈夫ですよ、繋いだ手は離しませんから。
どうぞゆっくりとバスタブに浸かりなさい
入浴は心身ともにリラックス効果があるので、体を温めるとぐっすりと眠れますよ」
離さないでね!絶対に手を離さないでね!
うっかりするとバスタブの中に引きずり込まれそうになるほどの葉子は草薙の手にしがみつきながら片足ずつゆっくりと湯の中に体を沈ませた。
「どう?気持ちいいでしょ?」
「ほんと…とても気持ちがいいわ…
ねえ、あなたも湯に浸かったらどう?」
混浴するにしてもバスタブが小さいので
それは無理ですよと笑って誤魔化した。
本音は今すぐ葉子の隣に飛び込んで強く抱擁したい気持ちでいっぱいだった。
バスタブに体を沈めても、葉子は草薙の手を離そうとはしない。
おかげで袖口が濡れてしまってほんの少しだけ不快だった。
「あの…ちょっだけ手を離してもいいかな…
袖をめくりあげたいんだ」
「あっ…!ごめんなさい…
私ったら全然気がつかなくて…」
少しずつ指の力が抜けて手がほどかれて行く。

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