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愛の笛
第12章 プロポーズ
草薙の手が離れて、
バスタブで文字通り一人っきりになると
たちまち葉子は不安そうな顔になり、次の瞬間、手足をバタバタさせて暴れだした。
「いやぁ~っ!!怖い!怖いわ!水が…水が迫ってくるのぉ!!」
不意に溺れた時の記憶がフラッシュバックしたのだろう。
その怯え方が尋常ではないため、
草薙は着衣であるにも関わらず、バスタブに飛び込むと「大丈夫!大丈夫だから!」とわめき暴れる葉子をしっかりと抱きしめてあげた。
草薙に抱きしめらると「ハアハア」と荒い呼吸は続くものの、
悲鳴をあげるようなパニックからは抜け出し、草薙の体を救命具のように掴んで離さない。
「やっぱりまだ一人っきりの入浴は無理みたいだね」
優しい低音ボイスに、ようやく葉子は自分を取り戻した。
そして、草薙にバスタブに引きずり込んでしまったこと、
彼は着衣のままなのでずぶ濡れになってしまっていることを詫びた。
「ごめんなさい…私ったら、あなたを湯の中に引きずり込んじゃったわ」
「いいんですよ。服なんて乾かせばいいだけですし…
でも、弱ったなぁ…こんなにずぶ濡れじゃ電車にも乗れないし、タクシーだって乗車拒否されるのが目に見えてるな」
「それなら…あの…ご迷惑でなければウチに泊まっていってくださいな…ねえ、そうしましょうよ、私、何だか今夜は一人で寝るのが怖いの」
「いや、しかし…」
断ろうとしたが、葉子の切実な眼に見つめられると心が揺らいだ。
「じゃあ…お言葉に甘えて今夜はリビングのソファを貸してください。僕が泊まってあげるから安心なさい」
そのように告げると「うれしい!」と葉子は草薙に抱きついた。
それは先ほどまでの切羽詰まった抱きつき方ではなく、
女が男に甘えるような優しい抱擁であった。
抱きついた拍子に体に巻いていたバスタオルが湯のなかで肌蹴た。
恥じらって抱擁を解いてバスタオルで体を隠すのかと思いきや「私たち…恋人同士だったんでしょ?それなら私のヌードなんて何度も見てるのよね?」と開き直ったかのように豊満なバストを草薙の胸に押し当ててきた。

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