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誰にも言えない、紗也香先生
第2章 3回目のレッスン
ページの文字を追いながらも、
体は別の言語を読み取っていた。
白くて堅い「男」の圧迫感が、背中から鼓動をあおり、
私は読書のふりをしながら、静かに体を揺らしていた。

甘い吐息が一文ごとに漏れてしまう。
ちらりと彼の顔を見るけど、
勇くんは真面目な目で、私の言葉をじっと聞いている。

ばれて……ない、よね?

でも、不安よりも先に、抑えきれない熱がこみ上げてくる。
胸が高鳴り、太ももが微かに震え始め――
やがて息が混ざり、ページを捲る音と、
革とクッションの擦れるリズムが重なっていく。

頭が揺れ、声が震え、一文字ずつが長く甘く溶けていく。
気づけば、私の口からこぼれたのは――
言葉ではない、息でもない、
どうしようもない「音」だった。

……っ……また……

体が小さく跳ね、心が遠くで泣きそうになる。
こんな姿、絶対に目を合わせられない。

でも、勇くんはただ一言、
「……休憩、しましょうか」
変わらない声で、そう言った。

私は、何も言えずに、ただ頷いた。
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