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誰にも言えない、紗也香先生
第2章 3回目のレッスン
勇くんが差し出したコップの水を、私は迷わず飲み干した。
喉が渇いていたのか、それとも――心が、乾いていたのか。

「……疲れましたか、先生」
彼の声は、優しく、そして少し意地悪だった。

そのすぐ後。
「さっきの先生……すごく、可愛かったです」

小さく囁かれた言葉が、耳元に残る。

……やっぱり……見られてた
わたし、全部、知られてた……二回も……

頬が、耳が、首まで真っ赤になるのが分かった。
恥ずかしさが胸を押しつぶして、言葉にならない。

「……ばか、雄くんの、ばか……っ!」

怒ったふりをして、私は顔を隠すように、
彼の胸元へと潜り込んだ。
こんな姿、見せられるわけがない。

でも――
彼の心臓の音が、静かに、でも確かに私の耳に届いた。

(……ドクン、ドクン……)

それは私の音と、まるで同じ速さで――
交じり合っていた。
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