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誰にも言えない、紗也香先生
第2章 3回目のレッスン
たった、数歩の距離なのに 心臓が、止まりそう。
後ろ手のまま、私はゆっくり歩く――彼に導かれるように。

トイレの前まで来た。
勇くんは何も言わず、ただ私の肩を軽く押して、
そこに立たせてくれた。

言わなきゃ……自分じゃ……できない……

「……あの……その……脱げなくて……」
背中越しに小さな声で頼んだ。

勇くんが、静かに動く気配。
ぎこちない手つきで、スカートの裾をそっと持ち上げる。
私は、恥ずかしさで顔が真っ赤に――

片足を、彼に支えられながら上げる。
もう片方も。少しバランスを崩しながら、やっと……。

「ありがとう……」と囁いたあと、勇くんがドアを閉めてくれた。

でも、まだ安心できない。
彼はドアのすぐ外に、静かに立っている気配がある。

聞こえてないよね……水の音……

私は身を縮めながら、そっと息を吐いた。
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