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誰にも言えない、紗也香先生
第3章 謎の女、ファンタシーの扉

車が静かに地下の駐車場に滑り込む頃には、
私のグラスはすでに空になっていた。
少しだけ頬が火照っているのは、きっと車内の温度のせい。
ドアが開き、ハイヒールの音が近づく。
リザが、微笑んで迎えてくれた。
その微笑みは、どこか懐かしくて、でもどこまでも謎めいていた。
「よく似合ってるわ、紗也香先生」
そう言って、彼女はあいさつのように頬に唇を寄せた。
一瞬、時が止まったような気がして、私はただ目を見開いたまま、うなずくしかなかった。
今日のリザは、私とは対照的な純白のドレスに身を包んでいた。
まるで月と影、光と夜のような、対の装い。
同じく高く尖ったヒールを鳴らしながら、彼女は私の手を引いて歩き出した。
エレベーターが上層へと静かに昇ってゆく。
扉が開いた瞬間、世界が一変する。
深紅の絨毯が床一面に広がり、
中央に一脚だけ置かれた椅子が、まるで私を待っていたかのようにそこにあった。
リザに導かれるまま、私はその椅子に腰を下ろす。
その瞬間、二人のメイドが音もなく現れ、トレイに乗せた二つのグラスを差し出した。
ひとつは、燃えるように赤く、名前は「欲」。
もうひとつは、透き通る青に気泡が踊る「ファンタジー」。
私は迷わず、青いグラスを手に取る。
リザも同じものを選び、向かい合ってそっと乾杯の仕草。
口に含んだ瞬間、舌の上で弾ける炭酸と共に、
不思議な甘さとほんのり漂うアルコールの香りが広がる。
心がふわりと浮かび上がるような、幻想の味。
グラスを置いた瞬間——
リザがそっと、私の背後に回り込む。
そして、静かに肩に手を添えたかと思うと、
耳元にやさしく唇を寄せてきた。
くすぐったさと、どこか心を揺らす新しい感覚。
女性からのこんな優しさに触れるのは、これが初めて。
でも、不思議と嫌ではなくて。
閉じたままの目の奥で、世界が柔らかく滲んだ。
私のグラスはすでに空になっていた。
少しだけ頬が火照っているのは、きっと車内の温度のせい。
ドアが開き、ハイヒールの音が近づく。
リザが、微笑んで迎えてくれた。
その微笑みは、どこか懐かしくて、でもどこまでも謎めいていた。
「よく似合ってるわ、紗也香先生」
そう言って、彼女はあいさつのように頬に唇を寄せた。
一瞬、時が止まったような気がして、私はただ目を見開いたまま、うなずくしかなかった。
今日のリザは、私とは対照的な純白のドレスに身を包んでいた。
まるで月と影、光と夜のような、対の装い。
同じく高く尖ったヒールを鳴らしながら、彼女は私の手を引いて歩き出した。
エレベーターが上層へと静かに昇ってゆく。
扉が開いた瞬間、世界が一変する。
深紅の絨毯が床一面に広がり、
中央に一脚だけ置かれた椅子が、まるで私を待っていたかのようにそこにあった。
リザに導かれるまま、私はその椅子に腰を下ろす。
その瞬間、二人のメイドが音もなく現れ、トレイに乗せた二つのグラスを差し出した。
ひとつは、燃えるように赤く、名前は「欲」。
もうひとつは、透き通る青に気泡が踊る「ファンタジー」。
私は迷わず、青いグラスを手に取る。
リザも同じものを選び、向かい合ってそっと乾杯の仕草。
口に含んだ瞬間、舌の上で弾ける炭酸と共に、
不思議な甘さとほんのり漂うアルコールの香りが広がる。
心がふわりと浮かび上がるような、幻想の味。
グラスを置いた瞬間——
リザがそっと、私の背後に回り込む。
そして、静かに肩に手を添えたかと思うと、
耳元にやさしく唇を寄せてきた。
くすぐったさと、どこか心を揺らす新しい感覚。
女性からのこんな優しさに触れるのは、これが初めて。
でも、不思議と嫌ではなくて。
閉じたままの目の奥で、世界が柔らかく滲んだ。

