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誰にも言えない、紗也香先生
第3章 謎の女、ファンタシーの扉
椅子に座る私の背に、リザさんの気配が優しく忍び寄る。
しなやかな指先が、私の首元にふれると、そこに冷たい感触が落ちた。

「サヤ、このチョーカーで……ファンタジーの衣装は完成ね」

リザさんの声は甘い吐息のように耳元で囁かれ、私の心臓はひとつ跳ねた。
首に巻かれた青いチョーカーには、金属のリングが飾られている。
まるで、夢と現実の境界を閉じ込める鍵のよう——。

リザさんがそっと、メイドから受け取った柔らかな布を私の目元へ。
ゆっくりと、視界を覆われる。世界が音と香りと感触だけで満たされてゆく。

「サヤ、目と手ではなく……心と身体で世界を感じてほしいの」

その声が、遠くて近くて、私の中に溶ける。
そして、手首に触れるのは、硬質な金属の輪。
カチリ、と確かに音を立てて、私の自由は奪われた。

私の心は、まるで羽が生えたように軽く、そして熱を帯びていた。
見えないはずのリザの微笑みが、私の肌に伝わってくる。

目を閉ざし、手を縛られた私は、知らない扉の前に立っていた。
それを開ける鍵は、もう……この首にある。
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