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愛染明王の御前で
第1章 第一話

接客を終えると、店主が梢に配達を頼んだ。
「梢ちゃん、配達をお願いしたいんだけどね」
「はい。どちらですか?」
「瑞鳳寺さんだよ」
「えっ?瑞鳳寺さんですか?」
この店の上客である瑞鳳寺にはいつも店主が配達に行っている。
「アルバイトの私が行きますけど」と梢が申し出ても「ダメダメ。うちは瑞鳳寺さんがないと商売やってけないんだよ。梢ちゃんを信用してないってわけじゃないんだけど、何か粗相があったら大変だからね」と言って梢に瑞鳳寺への配達のお鉢が回ってくることはなかった。
それがどういう風の吹き回しだろう。
「この前ご住職がうちの前を通ったんだって。そのとき店先にいた梢ちゃんを見たらしいんだ。梢ちゃんは知らないかもしれないけど、ご住職は霊とか憑き物が見えるんだ。そしたら見えたんだって」
「な、何をですか?」
梢は思わずたじろいでしまった。
「生霊だってさ」
店主はお化けを表す手の仕草をしてふざけてみせた。
梢には思い当たる節があった。
別れたはずの元カレが、執拗に付きまとっていた。
復縁を申し出て、なかなか梢から離れてくれていなかった。
腰まで伸びたストレートの髪はカラスの濡れ羽色。
ぱっちりと大きく開いた瞳は淡いブラウン。
メラミン色素がもともと薄く、肌も白い。
唯一の欠点は身長だという人もいれば、それが梢の魅力だという人もいる。
150cmそこそこの背丈が男心をくすぐるのは間違いない。
華奢な身体がそれに拍車を掛ける。
一度手に入れた大和撫子を簡単に諦めることを、元カレはしてくれない。
「梢ちゃん、配達をお願いしたいんだけどね」
「はい。どちらですか?」
「瑞鳳寺さんだよ」
「えっ?瑞鳳寺さんですか?」
この店の上客である瑞鳳寺にはいつも店主が配達に行っている。
「アルバイトの私が行きますけど」と梢が申し出ても「ダメダメ。うちは瑞鳳寺さんがないと商売やってけないんだよ。梢ちゃんを信用してないってわけじゃないんだけど、何か粗相があったら大変だからね」と言って梢に瑞鳳寺への配達のお鉢が回ってくることはなかった。
それがどういう風の吹き回しだろう。
「この前ご住職がうちの前を通ったんだって。そのとき店先にいた梢ちゃんを見たらしいんだ。梢ちゃんは知らないかもしれないけど、ご住職は霊とか憑き物が見えるんだ。そしたら見えたんだって」
「な、何をですか?」
梢は思わずたじろいでしまった。
「生霊だってさ」
店主はお化けを表す手の仕草をしてふざけてみせた。
梢には思い当たる節があった。
別れたはずの元カレが、執拗に付きまとっていた。
復縁を申し出て、なかなか梢から離れてくれていなかった。
腰まで伸びたストレートの髪はカラスの濡れ羽色。
ぱっちりと大きく開いた瞳は淡いブラウン。
メラミン色素がもともと薄く、肌も白い。
唯一の欠点は身長だという人もいれば、それが梢の魅力だという人もいる。
150cmそこそこの背丈が男心をくすぐるのは間違いない。
華奢な身体がそれに拍車を掛ける。
一度手に入れた大和撫子を簡単に諦めることを、元カレはしてくれない。

