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愛染明王の御前で
第2章 第二話

店の軽自動車を駐車場に駐め、梢は花を抱えて本堂の裏手にあると店主から教えられた庫裏へ向かった。
インターフォンがない。
仕方ないので恐る恐る引き戸を勝手に開け、か細い声で「こんにちはー。橘生花店から参りましたー」と言って中を窺うと、作務衣姿の海坊主のような大きな男と目が合った。
後ずさりしそうになるその風貌に驚いた梢は、思わず声が出てしまった。
「ひっ!」
「ん?橘さんのところのお嬢さんだね」
海坊主にはよほど似つかわしくない、テノールの利いた優しい声がした。
「は、はい。橘生花店から参りました…」
「うんうん、わかっているよ。店先で一度見たことがあるからね」
「ご、ご住職様で…」
「あははは。『様』だなんて。ご住職で結構!」
歳の頃なら60過ぎ。
頭は見事なまでにツルツルで、がっしりとした体躯には貫禄が備わっていた。
言葉は悪いが、外見だけで判断するならば生臭坊主といったところだ。
ギョロリとした目、福耳に厚ぼったい唇。
この職業でなければ、任侠道に生きる人間だと思われそうな雰囲気である。
じっと見つめられると住職の瞳に吸い込まれそうになる感覚を覚えた梢は、まずは自分の仕事を済ませることに専念しようと心掛けた。
「あ、あの、お、お花は、どちらへ…」
「ああ、そうだね。じゃあ本堂まで来てもらおうか。僕も半分持ちましょう」
住職は梢から花を半分受け取って、上がるよう促した。
インターフォンがない。
仕方ないので恐る恐る引き戸を勝手に開け、か細い声で「こんにちはー。橘生花店から参りましたー」と言って中を窺うと、作務衣姿の海坊主のような大きな男と目が合った。
後ずさりしそうになるその風貌に驚いた梢は、思わず声が出てしまった。
「ひっ!」
「ん?橘さんのところのお嬢さんだね」
海坊主にはよほど似つかわしくない、テノールの利いた優しい声がした。
「は、はい。橘生花店から参りました…」
「うんうん、わかっているよ。店先で一度見たことがあるからね」
「ご、ご住職様で…」
「あははは。『様』だなんて。ご住職で結構!」
歳の頃なら60過ぎ。
頭は見事なまでにツルツルで、がっしりとした体躯には貫禄が備わっていた。
言葉は悪いが、外見だけで判断するならば生臭坊主といったところだ。
ギョロリとした目、福耳に厚ぼったい唇。
この職業でなければ、任侠道に生きる人間だと思われそうな雰囲気である。
じっと見つめられると住職の瞳に吸い込まれそうになる感覚を覚えた梢は、まずは自分の仕事を済ませることに専念しようと心掛けた。
「あ、あの、お、お花は、どちらへ…」
「ああ、そうだね。じゃあ本堂まで来てもらおうか。僕も半分持ちましょう」
住職は梢から花を半分受け取って、上がるよう促した。

