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愛染明王の御前で
第3章 第三話

庫裏から本堂へと続く廊下は、初夏だというのに少し寒く感じた。
大きな本堂に日光が遮られているからだろう。
陽がほとんど差し込んでいなかった。
板張りの床も当然のことながら冷たい。
長い廊下を進み、先の引き戸を開けると本堂の左手脇へと出た。
線香の香りと何やら青い香りが梢の嗅覚を刺激した。
本堂は畳部分だけで何十畳あるだろう。
青々とした畳が眩しい。
「わぁ、広い!」
今まで寺院の本堂の中など見たことがなかった梢にとって、その広さに圧倒された。
高い天井は5mや6mではきかない。
「じゃあ、ご本尊様の左右と手前のあたり、今あるところ全てに新しいお花を生けてもらえるかな?」
「は、はい!よ、よろしいのですか?」
「ええ。構いませんよ。たしか、藤野さん。藤野梢さんっておっしゃったかな?いい名前だね」
「は、はい。藤野と申します」
「うん。ご店主から『鍛えてやってください』って言われてるんだ。『できることは何なりとさせてください』って」
「そ、そうでしたか」
きっといつもは店主が生けているのだろう。
配達だけでなくこうした細やかなことをするからこそ、小さな生花店でも使ってくれているのかもしれない、と梢は思った。
大きな本堂に日光が遮られているからだろう。
陽がほとんど差し込んでいなかった。
板張りの床も当然のことながら冷たい。
長い廊下を進み、先の引き戸を開けると本堂の左手脇へと出た。
線香の香りと何やら青い香りが梢の嗅覚を刺激した。
本堂は畳部分だけで何十畳あるだろう。
青々とした畳が眩しい。
「わぁ、広い!」
今まで寺院の本堂の中など見たことがなかった梢にとって、その広さに圧倒された。
高い天井は5mや6mではきかない。
「じゃあ、ご本尊様の左右と手前のあたり、今あるところ全てに新しいお花を生けてもらえるかな?」
「は、はい!よ、よろしいのですか?」
「ええ。構いませんよ。たしか、藤野さん。藤野梢さんっておっしゃったかな?いい名前だね」
「は、はい。藤野と申します」
「うん。ご店主から『鍛えてやってください』って言われてるんだ。『できることは何なりとさせてください』って」
「そ、そうでしたか」
きっといつもは店主が生けているのだろう。
配達だけでなくこうした細やかなことをするからこそ、小さな生花店でも使ってくれているのかもしれない、と梢は思った。

