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愛染明王の御前で
第3章 第三話

花を生けていると、梢の身体はだんだん冷たさを感じた。
本堂の奥まった位置にある本尊には、日光が届かない。
いい陽気だったので、車の中にカーディガンを置いてきた自分を恨んだ。
「寒いかな?」
梢の仕草を見ていた住職が聞いてくれた。
「い、いえ、そんなことは…。大丈夫です!」
「あはは。遠慮しなくていいよ。寺の本堂などというところは、夏暑く冬寒いと相場が決まってる。でもうちは夏寒く冬寒いなんだよ」
いつまでも郊外だと思っていたこの街にも都市化の波は訪れた。
南側に大きなマンションが建ってしまい、陽の当たりが午前中だけになってしまった、と住職は言った。
「それにね、ご本尊様に直接日光を当てないようにと、昔昔の住職は決めたらしいんだ」
「そ、そうですか」
梢は住職の話に耳を傾けながらも、与えられた仕事をこなそうと頑張った。
店主の「粗相のないように」という言葉が頭から離れない。
仏様やたくさんの装飾具に緊張こそすれ、他のことにまで頭が回らなかった。
本堂の奥まった位置にある本尊には、日光が届かない。
いい陽気だったので、車の中にカーディガンを置いてきた自分を恨んだ。
「寒いかな?」
梢の仕草を見ていた住職が聞いてくれた。
「い、いえ、そんなことは…。大丈夫です!」
「あはは。遠慮しなくていいよ。寺の本堂などというところは、夏暑く冬寒いと相場が決まってる。でもうちは夏寒く冬寒いなんだよ」
いつまでも郊外だと思っていたこの街にも都市化の波は訪れた。
南側に大きなマンションが建ってしまい、陽の当たりが午前中だけになってしまった、と住職は言った。
「それにね、ご本尊様に直接日光を当てないようにと、昔昔の住職は決めたらしいんだ」
「そ、そうですか」
梢は住職の話に耳を傾けながらも、与えられた仕事をこなそうと頑張った。
店主の「粗相のないように」という言葉が頭から離れない。
仏様やたくさんの装飾具に緊張こそすれ、他のことにまで頭が回らなかった。

