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愛染明王の御前で
第4章 第四話

幸いだったのは梢だ。
膀胱がパンパンになるほどの尿意だった。
「あのぉ、すみませんが…」
「あら、見ない靴があると思っていたら。あなた、どちら様?」
穏やかな口調はその美貌に見合っていた。
柔らかい言葉遣いには品格さえ感じた。
自分の言いたいことよりも先に挨拶である。
「わ、私は橘生花店から参りました。藤野梢と申します」
梢は住職に初めて挨拶するときと同じように深々とお辞儀をした。
それがいけなかった。
両手を下腹部で重ねて力を入れたものだから、尿が軽く漏れてしまった。
「あら、偶然!私は家内の藤乃って言います。よろしくね。同じ『ふじの』だなんて嬉しいわ。同性婚をしたら『ふじの・ふじの』になるのね。仲良くしてもらえるかしら。うふふ」
藤乃の指先が梢の指先にそっと触れた。
「そ、そうですね、私も光栄です」
「橘さんのところにこんなかわいらしい子がいたなんて。もったいぶらないで配達に寄越してくださればよかったのに」
妖艶な眼差しで見られた梢は、ゾクゾクっとした。
さらに尿意が募る。
いや、尿が内腿を一本の流れとなって重力に負けていることを、肌で感じた。
膀胱がパンパンになるほどの尿意だった。
「あのぉ、すみませんが…」
「あら、見ない靴があると思っていたら。あなた、どちら様?」
穏やかな口調はその美貌に見合っていた。
柔らかい言葉遣いには品格さえ感じた。
自分の言いたいことよりも先に挨拶である。
「わ、私は橘生花店から参りました。藤野梢と申します」
梢は住職に初めて挨拶するときと同じように深々とお辞儀をした。
それがいけなかった。
両手を下腹部で重ねて力を入れたものだから、尿が軽く漏れてしまった。
「あら、偶然!私は家内の藤乃って言います。よろしくね。同じ『ふじの』だなんて嬉しいわ。同性婚をしたら『ふじの・ふじの』になるのね。仲良くしてもらえるかしら。うふふ」
藤乃の指先が梢の指先にそっと触れた。
「そ、そうですね、私も光栄です」
「橘さんのところにこんなかわいらしい子がいたなんて。もったいぶらないで配達に寄越してくださればよかったのに」
妖艶な眼差しで見られた梢は、ゾクゾクっとした。
さらに尿意が募る。
いや、尿が内腿を一本の流れとなって重力に負けていることを、肌で感じた。

