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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第20章 呪いの侵食


「ハッ…!?」

 鬼の感情の揺れを察知して、式鬼(シキ)が困惑した。

「なりません鬼王さま! ここら一帯を吹き飛ばせば甚大な被害が…ッッ」


 鬼の内側から吹き出す妖気が、花街全体を圧倒する。

 黒い霧が渦巻き、地面が震え、建物が軋む。




(殺す)




 それは鬼が鬼たる真髄──


 鬼界に君臨する者の、あまりにも純粋なる衝動


 強大な、殺意だ




「………」



 空気が息苦しくなるほど膨らみ、膨らみ、膨らんで──



「──…!」



 ──



 しかし、唐突に止まった。







 ....



「やめて……ください。
 あなたひとりで戦ってはなりません……!」


「……!?」


 鬼が背後に振り向く。

 そこには黒衣をまとい、天哭ノ鏡を持つ巫女が立っていた。

 巫女の姿を目に入れた瞬間、鬼の膨らんでいた殺意が跡形もなく掻き消えた。









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