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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第21章 最期の言葉

(あの女……俺が人界に送った筈だぞ。なぜ鬼界にいる?)
大蛇(オロチ)は信じられないとばかりに、現れた巫女を凝視した。
蛇のような細い目が鋭く光る。
(鬼王が連れ戻したのか?)
フッ....
ただ、戸惑いも束の間、大蛇は再び口の端を歪め、笑みを浮かべた。
「想定外……! これはこれで、愉しいかもな」
彼の視線が、鬼王と巫女の二人を見比べる。嘲笑と興味が入り混じった目が、獲物を値踏みするようだった。
一方、攻撃の手を止めた鬼王は、口を開かず立ち尽くしていた。
巫女の姿を見た瞬間、心の奥底で何かが軋む。
人間である彼女が此処にいてはならない──その動揺が波紋のように広がり、彼の妖気を乱した。
漆黒の衣が花街の風に揺れる中、鬼王の心は混乱に飲み込まれる。
「ナンだコイツは! 人間…か…?」
「人間ダ、人間の女ダ!」
巫女の登場でモノノ怪の群れが騒がしくなり
呪われたモノたちは…逆に動きを止める。
「グ...グググ...!!」
巫女の清らかな気配に本能的に恐れを抱いたのだ。黒い瘴気をまとった異形たちは後ずさった。

