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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第21章 最期の言葉


「──…」


 多くの目に晒される中…巫女は鬼の腕の中で静かに顔を上げた。


「…不思議、です。今のあなたからは恐怖と悲しみを感じます」

「……!」

「わたしの命が終わる事を悲しんでくださるのですか?」

 そう口にした巫女は無意識に手を伸ばし、鬼の顔に触れた。

 細い指が、鬼の眉間に触れ、苦しそうにシワを寄せているそこを優しく撫でる。

「…それが、慈しむ、というコトです」

「…っ、黙れ」

 鬼は耳をかさないが、彼女は安心させるように微笑み、鬼の胸をトンと押した。

 彼女には……もう、あまり時間がない。

「離して……ください」

 胸を押された鬼の腕の力が弱まり、巫女は自分の足で立った。



 ....



 天哭ノ鏡(テンコク ノ カガミ)を両手で持ち直し、周囲をゆっくりと見渡す。



 そこにいるのは


 呪われ、自我を失い仲間を襲う異形たち──

 鬼の妖術で鎖に捕らわれ、のたうち回るモノノ怪──

 同じく縛られて地面に転がされた狐族──



「──…」



 巫女の瞳に決意が宿り、大きく見開かれた。



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