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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第21章 最期の言葉

 光がおさまった時、そこには呪われていたモノノ怪の亡骸がいくつも倒れていた。

 先程までの凶悪な形相(ギョウソウ)は消え、もとの容貌に戻っている。

 花街の空気が軽くなり、血の滲む黒い霧が薄れた。

「ハァ‥‥‥ハァ‥‥‥ハァ‥‥‥!」

 巫女の身体が力尽き、ふらりと倒れかける。

 それを鬼が再び受け止めた。

 彼女の華奢な身体が、鬼の腕に沈んだ。



「──影尾!」

 そこへ遅れて走ってきた玉藻(タマモ)が、叫びながら狐族の輪に駆け寄る。

 駆け寄った先には彼女の兄である影尾(カゲオ)がいた。

「影尾!影尾!生きておるか!?無事じゃろうな!?」

「…っ…玉藻…? …これ、は、どうなってんだ…!?」

 影尾は縛られたまま、血と泥にまみれた顔を上げた。

 彼を侵食していた呪いの黒い斑点が跡形もなく消えていたのだ。

「オレは…? オレたちはっ…呪われたんじゃなかったのか…!?」

 彼は自分に起きた奇跡を理解できないでいた。

 玉藻は混乱する影尾にぎゅっと抱きつき、涙を流す。

「巫女じゃっ…、巫女が、われらを助けてくれたんじゃ…!」

 彼女はそこから、鬼に抱かれる巫女を見た。


「鬼界にきたら──…っ死ぬとわかっておったのに……!」


「……っ」


「それでもっ……それなのに……巫女は」








 ──




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