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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第21章 最期の言葉

本気で求めたのに
手に入れたいと執着したのに
離れがたいと自答したのに
何故だ?こぼれ落ちる……!
どれだけ強くなろうと無意味だったのか
鬼界の頂点に立ち、揺るがぬ力を手に入れようと
たったひとりの女さえ、助けることはできないのか?
「死ぬのか……!」
「‥‥‥ぇぇ、もう‥わたしは」
名を捨てた過去──八百年前の別れが、巫女の消えゆく命と重なる。
彼女を繋ぎ止める手立てがない。
ふたりの先には、避けられぬ別れが迫っていた。
別れとは、これほど辛く怖いものなのかと…鬼は思い知る。同時に、かつての巫女の言葉が脳裏をよぎった。
『 人の世は、鬼界と異なり、常に移り変わり…そして巡っています。朝と夜、春と冬、生と死…… 』
『 だからこそ人は、それら一瞬を切り取り、慈しみ、心を動かすことができるのです 』
……人間は、巡るのか
この苦しみを
怒りを、恐怖を、後悔を……置き去りにして
俺を置き去りにして……お前は巡るというのか

