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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第24章 終章──いつの日か

道から外れた林の中は、日差しが木々の隙間から柔らかく差し込み、地面にまだらな光の模様を描いていた。
葉がそよぐ音と、小鳥のさえずりが響き合い、林は穏やかな息吹に満ちている。苔むした岩の間を、小さな沢の水がさらさらと流れ、湿った土の香りが漂う。
「よし、出てきていいぞ」
地面に座る黒髪の少年が、背負ったあみカゴに声をかけた。
するとカゴのフタが開き、中から狐が現れた。
狐はよじよじと外へ出て、ポンと少女の姿に変わる。
獣耳がピクピク動き、小麦色の髪が春風に揺れる。
「狭いカゴの中は退屈じゃあ」
「しょーがないだろ。お前、変化が下手で耳が残るんだから」
「うるさいわい。はよぅ食べるぞ」
「よし」
少年が手に持つ包みをひらくのを、少女は獣耳をピクピク動かしながら見つめた。
「──こら、何をしているのですか」
すると突如、そのふたりの上に影がかかる。
「──ッッ」
慌てた少年は狐の姿になり、素早い動きで包みを置いて逃げた。

