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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第24章 終章──いつの日か

そこには桜餅が並んでいた。
「…っ…玉藻、人間から物を騙し取ってはいけません」
「何故じゃ? 美味いのに」
「その人にとってとても大事な物かもしれないでしょう? 玉藻は突然、自分の大事なものを奪われたらどう思いますか」
「……、嫌じゃ」
「そうですね」
巫女は玉藻を諭しつつ、地面を這ってきた影尾を膝に迎えて、よしよしと撫でてやる。
「なにか欲しい物があればその人を助けてあげることです。自分にできることをして喜んでもらえれば…相手もあなたたちを助けてくれます」
「うん……」
玉藻は少しいじけたらしく、俯いて返事をする。困った顔で微笑んだ巫女は、彼女の頭も撫でてやった。
「では!これは没収です」
「……グスッ」
「……ということでわたしは報酬としてこの桜餅を店主さんに頂けるので、改めてわたしから、ふたりへお餅をあげますね」
「え?」
巫女は先ほどの男に、モノノ怪をとっちめた後は、盗まれた桜餅を報酬としてもらえないか交渉し
それで構わないと承諾されていたのだ。
「…くれるのか?」
「ええ、きちんと反省できたということで、お餅はあげます」
「あ、ありがと」
どぎまぎしながら包みを受け取る玉藻。
「巫女にもひとつあげる」
玉藻は、自分がはいっていたあみカゴを背負い、まだ動けない影尾を肩にのせて、林の奥へ去って行った──。
──
「食べんのか?」
「そうですね……せっかくなので、頂きます」

