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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第10章 赤い痕

巫女の背筋に冷たいものが走り、玉藻がピクリと身を震わせる。影尾はハッと顔を上げ、琥珀色の瞳に緊張が宿る。
「鬼王さま……!」
影尾が立ち上がる間もなく、鬼の長い腕が素早く伸び、彼の首を掴んだ。鋭い爪が影尾の喉元に食い込み、少年の体が宙に浮く。
「ぐっ…ぅぅ…!」
「黙れ、小童」
鬼の目は冷たく光り、影尾をまるで虫けらのように見下ろす。その力は圧倒的で、影尾は抵抗する間もなく巫女から引き剥がされた。
巫女は思わず立ち上がり、鬼の足元にすがりついた。
「やめてください! 彼は何も悪事をはたらいておりません! どうか、許して!」
彼女の声は切実で、震えている。
玉藻もまた、巫女の膝元で怯えたように身を縮め、小麦色の尾が震え、大きな目は恐怖で潤んでいたが、兄を助けてくれと懸命に鳴いていた。
鬼は必死な巫女の懇願を聞き、苛立たしげに舌打ちした。
黄金の瞳が一瞬、感情の揺れを見せる。それは怒りか、それとも別の何かか。
次の瞬間、彼は影尾を無造作に投げ飛ばした。
「うわっ!!」
影尾の体は宙を舞い、前方の離れた木の幹に強くぶつかった。
ゴトン、と鈍い音が響き、彼は痛みに顔を歪めて地面に倒れ込む。玉藻がぴょんと飛び出して、すぐに兄を追いかける。
巫女も一緒に駆け寄ろうとすると、鬼の手が彼女の腕を強く掴んだ。
「動くな」
「……っ」
鬼の声は低く、抑えきれない苛立ちが滲む。
巫女はハッと息を呑み、彼の顔を見上げた。

