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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第10章 赤い痕

 そこには、いつもより感情的な色が宿っていた。冷静さを装いつつも、どこか制御しきれていない激情が垣間見える。

「お、怒っているのですか?」

「……」

「どうして……っ」

「黙れ」

 男は彼女の両肩を掴んだ。

「お前に狐の匂いがこびりついているな……不愉快だ」

 そして巫女の着物を乱暴に引き剥がした。

「あ……っ」

 衿を左右に割られて、華奢な肩を露わにされた。彼女の肌は、光に照らされて陶器のように滑らかで、ほのかに桜餅の甘い香りが漂っていた。

 鬼の唇がその肌に触れ、鋭い牙が軽く食い込むくらいに強く吸い付く。

「んっ……!」

 巫女は小さく悲鳴を上げ、身をよじる。

 鬼の唇は冷たく、しかし熱い吐息を帯び、ゆっくりと首筋を這う。

 長い舌が肌をねっとりと舐め上げ、吸い付くたびに彼女の身体に赤い痕が刻まれた。

 最初は肩の端、柔らかな曲線を描く鎖骨のくぼみ、そして喉元の脈打つ部分。鬼は一つ一つ丁寧に、まるで彼女の身体を自分のものと刻印するように吸い付いたのだ。

 彼の舌は、肩の肌を円を描くように這い……敏感な部分を執拗に舐める。

 ジュルッ...

 湿った音が縁側に響き、巫女の身体がビクンと震えた。

「…は……ぁ……//」

 鋭い鬼の牙が軽く肌を掠め、痛みと快感が混じる感覚に彼女の息が乱れた。鎖骨のくぼみに唇を押し当て、強く吸い上げると、鮮やかな赤い痕が花びらのように浮かぶ。

 動揺して動く喉元を下から上へとなぞった後は、大きく口を開いてゆっくりと吸い付いた。チュポッ、と音が響き、赤い痕が彼女の白い肌に刻まれる。それはまさに、鬼の所有を主張する印である。



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