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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第11章 天哭ノ鏡

「……っ」
鬼は憎々しげに歯を噛みしぎり、突然手を離した。
「チッ……」
そして舌を打った鬼は巫女を残し、奥の間へと去る。
巫女は咳き込みながら、絹の布団に崩れ落ちた。「待って」と呼び止める声は、息が苦しくて途切れ途切れだった。
「待っ…て……!」
(あなたが人喰いではなかったことを、謝罪しなければならないのに……!)
上手く伝えられなかった。残された巫女は悲しみにくれる。
彼女の心は、鬼への恐怖と、彼の孤独を理解したいという願いで揺れていた。
何度も肌を重ねたことで、彼女は鬼の強大な力の裏に隠された、言葉にできない寂寥を感じ取っていたのだ。それは、鬼自身が気づかぬほど深く、彼女の魂を強く揺さぶるものだ。
──だが、鬼の背中はすでに暗闇に消え、彼女の声は届かなかった。
──

