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巫女は鬼の甘檻に囚われる
第12章 追放されたモノノ怪


 彼女の顔には、警戒と同時に、鬼との関わりで揺れ動く心の迷いが見え隠れしていた。


「──…そして今、あなたは、わたしの迷いに付け入ろうとするのですか」


 大蛇は低く笑い、余裕の態度を崩さなかった。

「話が早くて助かるねぇ」と呟き、彼女の言葉を軽く受け流す。

「だが勘違いしないでくれよ? 俺はあんたに害を与えたいんじゃない。ただ……鬼王の邪魔をしたいだけさ」

 巫女の声が動揺する。

「彼と敵対しているのですか」

「まさか、奴からすれば俺なんて眼中にない。鬼王はあんたに執着しているからな。あんたに関わるだけで丁度いい嫌がらせになるんだ」

 大蛇の言葉に、巫女の心がざわめいた。鬼が自分へ向ける異様な執着、その裏に潜む孤独をすでに彼女は感じ取っていたからだ。

 だが、大蛇の軽薄な口調に、巫女はさらに警戒を強める。

 隙を見せない彼女へ

 大蛇は面倒くさがるどころか、ますます愉しそうに詰め寄った。


「あんた……鬼王の秘密を知りたいんだろう?」

「……!」


 その言葉に、巫女の息が止まる。


「コッチこいよ」

 大蛇はニヤリと笑い、広間の奥へと彼女を誘った。



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