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火照るあなたの横にある小説
第2章 触れ合う温度
【夜の輪郭】

藍の指先が、迷いもなく千景の胸元をなぞる。
下着越しに触れるその動きは、まるで相手の奥を探るように静かで、じっくりとしていた。
千景は目を閉じて、藍の吐息と自分の呼吸の違いだけに耳を澄ませた。

どくどくと、胸が脈打つ音。
藍の手が肩紐を落とすたび、服の重さがなくなっていく。
露わになった肌をそっと撫でられるたびに、なにかが内側でほどけていくようだった。

「ほんとに、何も知らないんだね」
藍がそっと笑う。けれど、それは見下すようなものではなかった。
愛おしむような、少し羨ましがるような――不思議な響きだった。

「だったら、初めてはあたしにくれてよ」

千景はうまく言葉を返せず、ただ目を伏せる。
首筋に落とされたキスが、波紋のように感覚を広げていく。
こんなにも、自分の身体が熱くなるなんて知らなかった。

背中に回された手が、そっと下着を外す。
その音すらも、今はくっきりと聞こえる。
自分が誰かの手の中で、ほどかれていくのを、千景は拒むことができなかった。

藍の舌が、鎖骨の窪みをなぞうとした瞬間――
千景は、小さく声を漏らした。
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