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第1章 厳冬の氷点下で助けた女

「彼氏いるの？夜に、おじゃまして彼氏に悪いなあ。」
とオレは聞いた。

彼女の顔が曇った。

彼女が語りだした。

たった先ほどまで、いた…らしい。
今晩は彼氏のところに泊まる予定だった。
明日は休みだから、楽しみにしていたらしい。
ところが別れ話になって、耐えきれず彼氏の所から飛び出してきたらしい。
それで、あんな時間に車を走らせていたのだ。

泣きながら、自暴自棄になり、車を走らせていた。
あっ、と気が付いたら車がスリップして道路下に落ちていった。
一瞬の出来事だったらしい。

彼女は、そう話しながら涙目になった。
オレは、どう慰めていいかわからない。

涙で濡れている大きな瞳がじっとオレを見る。
美しい娘だ。
「お願い、忘れさせてください。」

弾力のある体が、オレに抱きついてきた。
さっきの冷え切った体とは違う、熱い体をオレに押し付けてくる。
そうして、オレにしがみついたまま、じっとしている。