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レッスンの仕方が間違っている!
第4章 3次審査まであと7日
-ブチツーツーーッ・ツーーッ

「今の、功ですよね!?」
「......zzzZZZ」
「はぁ、ついに私にも敬語を使わなくなるのか。昴みたいにはなりたくないですね~!」

 勿論相槌も返事も無い。
 作詞家鈴木 昴は、未だソファーの上を陣取って鼾をかいていた。
 向かいの硝子テーブルの上には、飲み干し空になったワイン、ブランデー、ウィスキー等のボトルが散乱している。
 部屋中にアルコールの匂いが充満している。
 その場にいるだけで酔ってしまいそうだ。

「確か、連れはあの子ですよね。えーと、喜多T-a-i-u・・」

 そう独り言を言いながら、パラパラバインダーの中の書類を捲る作曲家村上 楓。
 彼もまた、S★P主催で椿が受けたオーディション関係者である。
 因みに、審査では椿を高く評価。
 無論鈴木は、例のアクシデントで不在だったが、ストリートで椿に目をつけたのは事実。
 また、既に椿の活躍を肴に昨夜村上と一杯やったのもまた事実。
 そして今に至る。

「功をあんなに焦らせるなんて、一体どんな手を使ったんでしょう??……喜多 椿。3次審査が楽しみですね、昴?」
「バキッ」
「ぃッ!?」
「一体いつまで寝ているんです……??もう9:30時過ぎです!!打ち合わせがあるので早くして下さい。」

 村上 楓の容姿は、至って普通のサラリーマン。
 黒の短髪に色素の薄い肌と瞳。
 普段着と言っても過言でないくらいのスーツの着用率。
 一部の業界人からは、『あの人はスーツしか持っていないらしい』とまで言われている。
 無論、そんな事実はないが。
 そんな彼は、鈴木 昴の前になると極度のドSと化す。

「早くして下さい!そんなに蹴られたいんですか?なら叶えてあげま……」
「あ~わかった、わかったっっ!起きるよ!!」
「バサッ」
「あれ、かけてくれたんだ~。ありがと楓。」
「死にますか??」

 笑顔かつ敬語で言うのがまた怖い。
 そして何故か笑顔に影がある。

「あー、今日は功スタジオキャンセルだそうです。」
「え?あの子がねぇ。まぁ、概ね検討はつくよ。」
「パタン……ザーーーッ」
「水冷たーーっ!?」

 村上は鈴木の叫びなど聞かなかったかのように鼻歌混じりで、部屋を片し始めた。
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